ロックンロールの賞味期限

初めてデモテープを聞いて鳥肌がたった、3ピースのハードロックバンドがいます。



モノトーンの雰囲気をまとい、SEXピストルズよりも早く破滅に向かって疾走する、
「これぞロック」というその音源に、私は一撃で惚れ込んでしまうのでした。

しかもヴォーカルは女性です。
この本格派バンドが、近くメジャーデビューするんだ。
これは凄いことになるぞ。
日本の音楽シーンが変わるかもしれない。


その期待は、新木場のagehaで彼らのライブをこの目で見たことで確信へと変わっていったのでした。


それは夢のような時間でした。
野外に設営された小さなサーカスのテントの中を、50人も入れば一杯の一夜限りのライブハウスにし、 バンドと観客は一体となり、時間を忘れあらん限りの熱量を放出しました。



しかし、その後出てきた彼らのデビュー作は、もはやロックではありませんでした。


「売れ線」



レコード会社の制作スタッフの持つノウハウで、オリコンチャート上位に入りやすいように作られた、
似たような作品の群れの一つがそこにはありました。



元々、演奏技術も歌唱力も外見も、優れているとは言えないバンドです。
狂おしい青春の情動、叩きつけるしか無いエネルギー、彼らの魅力の全てはデビュー作にはありませんでした。



それから、7年が経ちました。



全くの偶然にそのバンドに今日再開し、彼らはインディーズでアナログのレコードを出すのだと聞きました。
私は祈るような思いで、レコードを回しました。でも、そこにはロックはありませんでした。